あれはZAZYか岸田か
徳重龍徳撮影
国会図書館を出て、目の前の緑がいちょうだと気づく。紅葉はまだかとひとりごつ。ただ利かない鼻の奥に銀杏のあの臭いがする。さっき見た木の並びには黄色くなり身を落としたいちょうが並んでいた。
小学高学年って早熟な子もいれば、幼い子もいる。いちょうも一緒だよなと思う。
横断歩道を渡り終えると、左手の門に逆三角形で「止まれ」と書いてある。これは交通標識なんだろうか。
門まで車が突っ込むなら、止まれの指示には従いそうにない。最後の良心に訴える施策か、はたまた日本的な「警告してました」の言い訳づくりか。なぞは深まるが、答えはなさそう。考えるのはやめてまた歩く。
丸の内線の国会議事堂駅に向かうと交差点に総理官邸が見える。日本で一番偉いと言われるわりに尊敬されない職業の人の仕事場だ。元がつくと業績だったり人間的なエピソードが出てきて少し好感度が上がるのはなぜだろう。
「仕事をしているときは褒められないのに、仕事をやめると褒められるのってだあれ?」
つい、なぞなぞ風に考えてみたけれど、答えは総理でなく働く人みんな。日本は褒められることをモチベーションにするのが難しい国だから、別の方法を考えないといけない。
そういえば、図書館を出る時にすれ違ったのは、50代後半の白髪交じりのメガネの男性で、トレンチコートの下はシャツと半ズボンだった。すね毛は生えていたかは忘れた。
あれはもしかしたらタイムスリップしてきたZAZYだったのかもしれない。違う世界線からきた岸田だったかもしれない。どちらでもないかもしれない。いや、なんそれ。
あれこれグルグルと考えているうちに改札についた。暇つぶしは終わり、スマートフォンを押しあて、帰路につく。移動時間の最良の使い方はまだ判らない。
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