何故、えなこの同じ画像がYahoo!ニュースには大量に並ぶのか

コスプレイヤーえなこを通して知るウェブメディアとコタツ記事の仕組み
徳重龍徳 2022.07.06
誰でも

はじめまして、ライターの徳重といいます。

「the Letterで書きませんか?」

とお声がけされてから、何を第一回目に書いていいのやらと迷い続ける日々でしたが、

諦めました!

ジャンルを絞った方がよいとは聞きますが、ベターなやり方が見えるまではとりあえず、思いつくがままに気になることをここでは書いていきます。

僕の得意分野は芸能、エンタメで、テレビ、配信、アニメ、マンガなどが好きです。特にグラビアについては秋葉原で年間100日以上の取材を7年ほど重ねていたため、人より少し詳しく、最近では評論家の仕事も少しずつ行っています。

あとはウェブメディア。iモードから、かつて所属した東京スポーツのウェブメディア「東スポWeb」の立ち上げの企画者で、その後もウェブメディアを転々としていました。

ウェブメディアの中の人が日々どんなことを考えているのかについては想像がつきますので、そのあたりのことについても話せればと考えています。

まあ、そもそもテレビ、新聞、雑誌といったレガシーメディア(注:古いメディアや時代遅れメディアの意でよくウェブの人間使いたがります笑)もウェブメディア展開は当たり前なので、すべてのメディアがウェブメディアなんですけどね。

今回は自分の得意としているグラビア×ウェブメディアな話題として、「何故、えなこの同じ画像がYahoo!ニュースには大量に並ぶのか」について書いてみます。

***

えなことYahoo!ニュース

今やグラビア業界の頂点といえる、コスプレイヤーえなこでしょう。

彼女の凄さを詳細に語るのは省きますが、表紙に起用すれば雑誌が通常の倍売れるという話はいろんな編集者から直接聞いていました。

えなこのTwitterのフォロワーは155万人、Instagramのフォロワーは204.8万人とSNSパワーでも桁違いの人気です。こうしたフォロワーは自ら、えなこの情報を取りに行っている能動的な人といえます。

しかし、彼女のSNSをフォローしていなくても「そういえばよく考えると、ネットを開くと、えなこに関するニュースを毎日見ているな」と思う人って、少なくないのではないでしょうか。

その理由の一つが、これです。

(yahoo!ニュースから)

(yahoo!ニュースから)

月間225億PVを超える、国内最大級のニュースプラットフォーム「Yahoo!ニュース」に、ほぼ毎日えなこの記事が掲載されているからです。

起床、通勤、昼、就寝前と、とりあえずYahoo!ニュースを開くことが習慣になっている人は多いですが、そこに毎日出ているとあれば、自ずとえなことの接触機会は増えますし、ザイオンス効果(同じ人やモノに接する回数が増えるほど、しだいにその対象に対して好印象を持つようになる心理現象)も働きます。

では、どんなメディアがYahoo!ニュースにえなこの記事を配信しているのでしょうか。ちょっと調べてみました。

どのメディアがえなこの記事を大量生産している?

今回は3月1日から5月31日までの3か月間にYahoo!ニュースで配信されたえなこに関する記事をまとめてみました。その表がこちらです。

(表制作:徳重龍徳)

(表制作:徳重龍徳)

この3か月間に配信された、えなこに関するニュースの総数は136本。1日およそ1.5本、Yahoo!ニュースに配信された計算になります。Yahoo!ニュースでは毎日、なにかしらえなこの記事が配信されたといえるでしょう。

次にその内容で「コタツ記事」「リリース記事」「その他」の3つのカテゴリーに分けました。

コタツ記事」とは、書き手がSNSやテレビでの話をもとに記事を書く、取材をしていない記事。「リリース記事」は事務所やPR会社がメディアに送ってくるリリースをもとに書く記事。「その他」は実際にえなこを取材した記事や、えなこに関する考察記事です。

データを見てみると、神戸新聞社が運営する「よろず〜ニュース」はコタツ記事は書かず、リリース記事のみであるのに対し、同じく神戸新聞社が運営する「デイリースポーツ」はコタツ記事だけを書き、リリース記事は書かないという棲み分けができているのは興味深いです。

集計してみるとコタツ記事は94本、リリース記事は37本、その他は5本とYahoo!ニュース上のえなこの記事はコタツ記事がもっとも多いことがわかります。

では、今度はえなこのコタツ記事について、もう少し詳しくみていきます。

えなこのコタツ記事を書く中日スポーツ

えなこのコタツ記事を書いているメディアのトップは中日スポーツ。その本数は2位のデイリーのほぼ倍となる40本。2〜3日に1本は、えなこのSNSを見てコタツ記事を書いていることになります。

中日スポーツの母体は中日新聞社で愛知県が本拠地。えなこも愛知出身。地元の人気タレントを推していこうということかな、とも考えたのですが、だったらえなこのリリース記事も書いているはずですが、中日スポーツはコタツ記事しか書いてないので、純粋な気持ちからではないでしょう。

さて、中日スポーツのえなこ記事にはもう一つ特徴があります。

それがこちら。

どのYahoo!ニュースの記事でも中日スポーツは、同じえなこの画像を使っているんです。

ちなみに2位のデイリースポーツを見てみると、こんな感じ。

(どちらもYahoo!ニュースから)

(どちらもYahoo!ニュースから)

こっちも全く同じ画像を使っている......。

ワンパターンにえなこの写真を使っているのはこの2社くらいで、いかに中日スポーツとデイリースポーツがお手軽に記事を量産しているのが分かります。

さすがにデイリースポーツはまずいと思ったのか、6月18日から違うえなこの画像を使ってはいるんですが、Yahoo!ニュース側はどう捉えてるんでしょうね......。

同じ画像を使っているのには、手間をかけないという以外に、別の理由も考えられます。記事内写真リンクを使い、本サイトへの誘導です。

まずウェブメディアの内部事情を少し説明したいと思います。

Yahoo!ニュースには現在、650媒体を超えるメディアが記事を配信しています。契約メディアは記事を配信した際、その記事が読まれた数(PV)ごとにいくらかお金をもらえるのですが、これは非常に安く、配信だけでは経営ができません。基本的にYahoo!ニュースに記事を配信しているだけではウェブメディアは赤字といっても過言ではありません。

それでもなぜ、メディアは記事を配信するのか。それはYahoo!ニュースを見た読者が記事末などにある関連記事から自社サイトに飛んでくることを狙っているからです。

自社サイトの記事に飛んでもらえば、その読者が掲載された広告をクリックし広告収入が狙えますし、Yahoo!ニュースから大量のユーザーが自社サイトを訪れれば自ずとPVが増え「うちはこのくらいのユーザーが訪れるので、広告を出す効果がありますよ」と自社の記事広告を売りやすくなります。

Yahoo!ニュースが行う、このやり方を「トラフィックバック」と言います。Yahoo!は、配信するメディアのサイトに自社のアドネットワークを置くことを義務付けており、Yahoo!ニュースだけでなく飛び先のメディアでも収益を上げる仕組みを作っています。なのでYahoo!ニュースに配信するメディアは、Googleアドセンスだけの方が効率がいいのに、しぶしぶYahoo!のネットワーク広告を入れていたりします。

話が脱線にそれましたが、Yahoo!ニュースへ配信するメディアにとっては、いかに関連記事を通し自社サイトに飛んできてもらうかが、利益につながります。

自社メディアへのリンクとしては記事下の関連記事が知られていますが、実は最も効果的なものが、記事のすぐ下に置かれる記事内写真リンクです。記事関連する画像や動画へのリンクを置く場所で、経験上、関連記事リンクで最も押される一番上のリンクの数倍のCTRを叩き出します。

※改めて、この下の図のやつです。

中日スポーツはたとえば上記の「えなこ『ヘソ出し乙姫様』にフォロワー『是非、竜宮城に招待を』『リアルに竜宮城にいたら最高だな』と歓喜」という、えなこがインスタグラムにアップしたセクシーな乙姫のコスプレ写真をもとにしたコタツ記事でも、Yahoo!ニュースにはその当該のコスプレの写真は掲載せず、いつも使っているえなこの写真を使います。

当然、見出しにつられてきた読者としては、えなこの乙姫コスプレの画像が見たくなります。

そこで中日スポーツは、自社のサイトには乙姫のコスプレ写真をアップ。先ほど説明したYahoo!ニュースの記事内写真リンクにコスプレ写真へのリンクを貼り、えなこのコスプレを見たいユーザーを自社サイトに引っ張るのです。

中日スポーツのサイトから(https://www.chunichi.co.jp/article/444866)

中日スポーツのサイトから(https://www.chunichi.co.jp/article/444866)

逆にYahoo!ニュース上で、えなこのコスプレ画像を見せてしまえば、読者はそこで満足してしまい、自社サイトへは飛んでくれません。

このため、中日スポーツやデイリースポーツは、金太郎飴のように毎回同じえなこの画像を使ったコタツ記事を量産し、自社のPVを稼ごうとしているのです。

まとめ

この記事内写真リンクを使ったPV稼ぎは、かなりのウェブメディアが行っている手法です。その中でも、えなこのコタツ記事をこれだけ作られるのは、彼女の人気が非常に高く、かわいくかつセクシーで引きのある写真をSNSにたびたびアップしており、ネットニュースの題材に困らないこと。さらに見出しに名前を出すと、一定のPVが稼げるからです。

そういう意味ではコタツ記事にうってつけのタレントといえると思います。

えなこ自身にとっても、SNSを普段見る層以外の人にYahoo!ニュースを通し、自身の情報が届くことは少なからずメリットになっているでしょうし、SNSのフォロワー増加にも寄与しているはずです。

一読者としては画像がすぐ見れずうざったいとは思いますが、えなこの人気が続く限り、今後もウェブメディアによるコタツ記事の量産は続くでしょう。

ちなみにYahoo!ニュースでえなこのコタツ記事を読むくらいならば、えなこ本人のTwitterをフォローしてしまうのが水着やコスプレ写真もきちんとアップしてくれますし一番と個人的に思います。

えなこ
@enako_cos
黒の下着ってカワイイ🥰(2回目)
2022/07/05 15:10
1826Retweet 37873Likes
***

書いているうちにグラビアというよりは、Yahoo!ニュースとメディアの仕組みのようになってしまいましたが、こうしたウェブメディアの手法を知ると、Yahoo!ニュース上から受け取れる情報が違ってきます。書くよりも、本当は話す方が楽なのですが、反響があればこうしたウェブメディアの読み方もやっていければと思います。

その他、グラビア系では、2022年上半期に出された写真集を50冊以上読んでいるので、上半期のベスト写真集、また雑誌のグラビアのベスト5などを書こうかなと考えています。

その他、ウェブメディアやエンタメで気になること、他媒体に掲載されたインタビューの裏話、軌道に乗ればオリジナルのインタビューなどを書こうと思っています。

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